⑦ 糖尿病の薬はいつから始める?治療の流れと選択肢
糖尿病と診断された際、多くの患者様が「もう薬を飲まないといけないの?」と不安になります。しかし、糖尿病治療において薬を始めるタイミングや選択肢は、患者様一人ひとりの状態によって異なります。早期の食事・運動療法で改善できるケースもあれば、合併症リスクを考慮して早期に薬物療法を導入すべき場合もあります。本記事では、糖尿病治療における薬の役割、開始の目安、主な治療薬の種類と特徴、当院での診療方針について詳しく解説します。
【薬を始めるタイミングはいつ?】
薬は「最後の手段」ではなく、「必要な時に早めに使う」ことが重要です。高血糖状態が長く続くと、膵臓のβ細胞がダメージを受け、将来的にインスリン分泌能力が低下してしまいます。 糖尿病治療は「段階的治療」が原則です。基本は食事・運動療法から始めますが、以下のような場合は薬物療法を検討します(年齢や合併症の有無などにより異なります)。
- HbA1cが7.0%以上の場合(特に7.5%以上では早期の薬物導入を推奨)
- 空腹時血糖値が130mg/dL以上、または食後血糖値が180mg/dL以上
- 食事・運動療法を3ヶ月行ってもHbA1cが目標に達しない場合
- 合併症リスク(網膜症、腎症、神経障害)が高い場合
【糖尿病治療薬の種類と特徴】
糖尿病の治療薬は多岐にわたり、患者様の病態に合わせて選択します。
- メトホルミン(ビグアナイド系):インスリンの効きを良くする「第一選択薬」。体重増加が少なく、心血管リスク低下効果も。
- DPP-4阻害薬:食後血糖の上昇を抑える。日本人に多用され、低血糖リスクが少ない。
- SGLT2阻害薬:尿中に糖を排出し、血糖を下げる。心不全や腎機能保護効果も期待される。
- GLP-1受容体作動薬:食欲抑制・体重減少効果もある注射薬。心血管疾患のリスクが高い方にも推奨されます。
- インスリン療法:自己注射が必要だが、重度の高血糖や膵臓機能低下例では必須。
- その他:α-グルコシダーゼ阻害薬、速効型インスリン分泌促進薬(グリニド系)など。
【当院での治療方針】
榊原サピアタワークリニックでは、以下の方針で治療を行います。
- 患者様の状態と生活背景を総合的に判断(仕事や家事の状況、食事のパターン、運動習慣など)
- 薬物療法は必要最小限でスタートし、効果を見ながら調整
- 薬だけに頼らず、食事・運動療法の3本柱として重視
- 最新の治療薬やガイドラインに基づき、最適な選択肢を提案
- 定期的なモニタリング(血糖値、HbA1c、合併症検査)で進行を防止
【薬を始める前に知っておきたいこと】
- 薬を使い始めたからといって「一生飲み続けなければならない」とは限りません。血糖値が安定し、生活習慣が改善すれば減薬・中止が可能な場合もあります。
- 副作用には個人差があり、気になる症状があれば早めに相談を。
- 薬物療法を始めても、生活習慣の改善を怠ると効果が得られにくくなるため、薬と生活改善はセットで取り組むことが大切です。
糖尿病治療における薬物療法は「補助輪」のような役割です。必要なときに適切に使用し、血糖値を安定させることで、合併症を予防し、健康寿命を延ばすことが可能です。当院では、患者様の不安や疑問に寄り添い、安心して治療を続けられる環境を整えています。薬の開始を迷われている方、治療に関して相談したい方はご相談ください。