⑤ 糖尿病合併症とは?失明・腎症・神経障害のリスク
糖尿病は「血糖値が高い状態が続く病気」というイメージが強いかもしれませんが、実は最も恐ろしいのはその「合併症」です。糖尿病そのものでは命を落とすことは少なくても、放置すると全身の血管や神経にダメージが蓄積され、深刻な健康被害を引き起こします。本記事では、糖尿病合併症の種類とリスク、当院で行う検査や治療法、そして合併症を防ぐために今日からできることについて解説します。
【糖尿病合併症の三大疾患】
糖尿病の代表的な合併症には「三大合併症」と呼ばれるものがあります。
- 糖尿病網膜症(失明のリスク)
高血糖状態が長期間続くと、目の網膜の毛細血管が傷つき、視力低下や最悪の場合は失明に至る可能性があります。日本では成人の失明原因の第1位であり、発症初期は自覚症状がほとんどないため、定期的な眼科検診が欠かせません。 - 糖尿病腎症(人工透析の原因)
腎臓の糸球体が高血糖により傷つくことで、タンパク尿が出始め、進行すると腎不全に至ります。日本では新規透析導入患者の約40%が糖尿病腎症によるものです。 - 糖尿病神経障害(しびれ・感覚異常)
手足のしびれや痛み、感覚の鈍化、筋力低下などを引き起こし、最悪の場合は足潰瘍や壊疽による切断に至ることもあります。
【糖尿病が引き起こすその他の合併症】
- 心筋梗塞・脳梗塞(動脈硬化の進行による血管閉塞)
- 足壊疽(末梢循環不全と神経障害の複合による)
- 感染症への抵抗力低下(肺炎、尿路感染症、皮膚感染症のリスク増大)
- 認知症の発症リスク増加(血管性認知症、アルツハイマー型認知症への影響)
【当院での合併症検査と管理】
榊原サピアタワークリニックでは、糖尿病患者様の合併症を早期に発見・予防するため、以下の検査を定期的に行っています。
- 眼底検査(眼科連携)
- 尿アルブミン検査・血清クレアチニン検査(腎機能評価)
- 神経障害スクリーニング(振動覚、アキレス腱反射)
- 心電図・頸動脈エコー・ABI検査(動脈硬化リスク評価)
- 必要に応じて、循環器内科に相談の上、冠動脈CT検査も施行いたします
これらの検査結果をもとに、食事療法・運動療法・薬物療法の見直しを行い、患者様一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療計画を立てます。また心血管リスクの評価のために、循環器内科専門医の定期的な診察もお勧めしております。
【合併症を防ぐために今日からできること】
- 血糖値の安定化
- 血圧・脂質管理の徹底(高血圧・脂質異常症のコントロールを行うことで、血糖値以外の血管障害リスクを減らす)
- 禁煙(喫煙は血管障害を加速させる)
- 定期的な検査を受ける(少なくとも年1回、合併症スクリーニングを受ける)
- 足の観察を習慣に(傷や異常に早く気づくためのセルフチェック)
糖尿病合併症は、放置すると生活の質を著しく低下させ、命に関わる病態を引き起こします。しかし、定期的な検査と適切な治療、生活習慣の見直しを徹底することで、その進行を大幅に遅らせることが可能です。